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「先 達」
過去に作られた記録は誰かが作り、そして破られて来た。しかし、常にその記録の裏には、たゆまない努力、不屈の精神力、そして言葉では決して表す事の出来ない心に秘めた目標が常にあるのだろう。 残り2試合を残して「イチロー」が偉業を達成した。まずは、心より賞賛を述べると共に、彼の後に続く挑戦者達への大いなる未来を開いた若者に心からの賛辞を送りたい。 先日、ミャンマーの野球選手たちに問い掛けた。君たちが今の生活の中で一番大切にしている事は何?皆口々に訳のわからない答えが返ってくる。私は心の中で考える・・・質問の意味がわからないのだろうか?いや、違う。 過去4年間、ほとんど野球が正に生活の中心で過ごしてきた選手達。にもかかわらず、生活の中心にあるのは「野球です!」と言う言葉がすぐに思考回路の中から見出せないのだろうか?しかし、その反面、安心した気持ちがあった。「嘘でも言いから、野球と言っておけば良いだろう」と思う子達がいたら、本当の気持ちが私にははっきりと分からないのかも知れないと・・・ 「イチロー」の野球に取り組んできた姿勢も話した。用具の手入れから、練習に取り組む姿勢まで。子供の頃から、本当に野球が好きで、野球を愛し、いつまでもフィールドに立ち続けたいと思い、願い、努力を積重ねてきた「イチロー」の姿。それは、最早、一人の野球選手の姿ではなく、一人の人間として世界に「人が生きていく上で大切な何か」を、野球を通じて訴え続けている「聖職者」の姿にも映る。野球はアメリカと言い続けられて来たが、海の向うで130年の野球の歴史を誇る日本から「イチロー」のような選手が出現しなかった事が遅いのかもしれない。いや、そんな事はない。メジャー最高安打記録は、84年間破られる事はなかったのだから・・・。 ミャンマーの球児達も、今現在何よりも好きで、大切で、誇りに思っていることは「野球選手」である、ということは私には誰よりも分かっている。 いつかまた私の投げかける「同じ」質問に、すかさず目を輝かせて「野球です!!」という答えが返ってきた時、また一つ成長の階段を登るのだろう。 質問をした数日後、練習休養日に所用で街に出て、外を眺めていると、ランニングをしているミャンマー人が目に止まった。走り方も普通のミャンマー人とは違いしっかりしている。「こんなミャンマー人もいるんだなー」と思いながら、追い抜きざま顔を眺めたてハッとした。選手達だ!現在、投手は球場まで往復のランニングを毎日12キロ行っている。練習休養日に、自分の意志で走る選手など今までいなかった・・・。 嬉しかった。既に、彼らは自分で次の階段を登ろうとしている。その先に何があるのか、たとえ、今は見えなくても。時折観る映像と、話でしか知らない「イチロー」。彼の野球にそして人生に取り組む姿勢が、未知の世界であるミャンマーの若者にも確実に伝わっていく。正に「イチロー」のこれからも成し得ていく偉業は、悩み、模索している世界中の人々に光を与える「人間としての偉業」ではないだろうか。
「人間 鈴木 一朗氏」に 合掌 一礼九拝
塾長 岩崎 亨
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